『イニシエーション・ラブ』
あらすじ
バブル真っただ中の、1980年代後半の静岡。友人から合コンに誘われ、乗り気ではなかったが参加することにした大学生の鈴木(松田翔太)は、そこで歯科助手として働くマユ(前田敦子)と出会う。華やかな彼女にふさわしい男になろうと、髪型や服装に気を使って鈴木は自分を磨く。二人で過ごす毎日を送ってきた鈴木だったが、就職して東京本社への転勤が決まってしまう。週末に東京と静岡を往復する遠距離恋愛を続けるが、同じ職場の美弥子(木村文乃)と出会い、心がぐらつくようになる。
わたしは前にこの原作本を読んでいて、この話が映画化されると聞いた時「それは絶対無理だろう」と思いました。可視化されていない、文章上で表現できるからこそ成立する話の内容だからです。どうなっちゃうのかと思ってたら、そこは堤幸彦監督、うまい具合に持っていったなと。
ネタバレになるので詳しいことはまったく書けませんが(そろそろネタバレしてもいい頃かもしれないけど)、ちょっとマニアックなことを書きますと、公式サイトに「亜蘭澄司」という見慣れない名前の人がキャストとして書かれています。ググってもこんな人いないのです。亜蘭澄司、いったい誰なのか?
「あらんすみし」と聞いたら、ピンと来る人もいるかもしれません。実はこれ、ハリウッドで使われる「アラン・スミシー」という名前に由来しています。アラン・スミシーも実在する人ではなく、様々な事情により監督が名前をクレジットされるのを拒絶した場合に使われてきた架空の名前なんだそうです。
となるとですね、『イニシエーション・ラブ』にも名前を出してほしくない人が出演しているということになるんです。もしくは「名前を出してはいけない人」という可能性もあり。出してしまった時点でネタバレになってしまうからかもしれませんよね。
ここが一つのトリックとなるわけですが、原作を読んでいない人はまんまと騙されるんじゃないかと思います。それくらいつなぎ方がうまかった。話を知っているわたしでも、危うく騙されそうになるほど。
わたしは誰がマユを演じるかということについて特に思い入れはなかったので、あっちゃんが演じるブリブリぶりっ子のマユでも別に違和感はなかったです。
鈴木が東京で出会う美弥子はマユとは対照的な女性で、鈴木が惹かれてしまうのもよくわかる。
あ、あと「静岡県には鈴木姓が多い」っていうのは大きなヒントです。
それにしてもバブリーな時代。着ている服からして当時のニオイがプンプンしますね(笑)。
わたしもバブルの恩恵を直接受けているわけではないので、エンドロールで流れる「80’s図鑑」がなかなか勉強になりました。それにしてもカセットテープ知らない世代が観るって事だよね。A面とかB面とか知らないんだよね・・・。
映画のキャッチコピーは「あなたは必ず、2度観る」ですが、最後にちゃんと種明ししてくれるので2度観る必要はないです。むしろ原作を読め(笑)。
「予告編を観て全部わかった」と豪語していた知り合いがいたけど、そんなわけないだろ。あれでわかったらもうこれから映画なんて観なくていいよ。もともと話を盛る人なので聞き流しましたけどね。
ということで、/5
なかなかよくできていたと思います。