『容疑者X 天才数学者のアリバイ』
あらすじ
孤独な高校の数学教師ソッコ(リュ・スンボム)の楽しみは、アパートの隣人であるファソン(イ・ヨウォン)が働く店で毎朝弁当を買うことぐらいだった。ある晩、彼はファンソンとめいのユナ(キム・ボラ)が暮らす隣の部屋の異変に気付く。度重なる暴力に耐えかね、ソウルへと逃れて来た二人をファソンの元夫が見つけて乗り込んで来ており・・・。
「容疑者X 天才数学者のアリバイ」の試写に行ってきました。日本でも映画化された「容疑者Xの献身」の韓国リメイク作品です。
以下、ネタバレあり。
話の筋はほぼあのままです。ラストがちょっと違うかな。あと、湯川先生は出てきません。女性刑事も出てきません。男性刑事が、湯川先生も女性刑事もこなして一人で解決しちゃいます。従いまして、ソッコと男性刑事が同級生、という設定です。
わたしの中で韓国映画は「きれいな映画」と「汚い映画」に2分されているのですが(笑)、これは「きれいな映画」でした。具体的に挙げるなら、大好きだったクォン・サンウの例だと
きれい→『恋する神父』 汚い→『マルチュク青春通り』かな。『チング 友へ』は両方入ってて汚い寄り、『猟奇的な彼女』もそんな感じ。『連理の枝』や『私の頭の中の消しゴム』がきれいな映画。全然わからない人には申し訳ない。(ちなみにMyワースト汚い映画は『悪い男』です。ほんと最悪この映画。いろんな意味で)
「容疑者Xの献身(以下「本家」)」で松雪泰子さんが働いていたお弁当屋さんが、こちら(以下「本作」)ではなんだかこじゃれたカフェみたいなお店になっていて、あれならわたしも毎日通いたいと思ったわ。しかもお弁当が2個で7,000ウォン(560円くらい)って、激安!内容も豪華だったし、食べてみたい。
雑貨屋さんみたい
ソッコはだんだん堤真一が演じていた主人公に似ているように見えてくるのが不思議。たぶん意識して役作りしたんじゃないかと思う。動きとか、歩き方とかも似てた。ただ、髪は剃らなかったみたい(笑)。
本家のラストで、罪の意識に耐えかねた松雪泰子がみんなの前で自白し、それを聞いた堤真一がおいおい泣き崩れるっていう印象的なシーンがあるんだけど、今作にはそれがない。かわりにソッコが移送されるバスを、ファソンが泣きながら追いかけるシーンで終わります。
ここで、わたしにこの映画の原作本を貸してくれた友人と意見が割れました。「果たしてファソンはこの後自首するのかどうか」で。
わたしはしないと思った。自首してしまったら、ソッコが自分の人生までかけてファソンを守った意味がない。家族でもない、彼女でもない、ただ一方的に想っている女性のために罪をかぶるなんて、そうそうできることじゃない。ソッコの気持ちを知ったからには、ファソンはそれを一生胸に刻んで、彼の代わりに生きていくべきだと思った。
でも友人はあっさり「え、あの後すぐ自首するんじゃない?」って。えぇー・・・・・・・そうかな・・・・。事件の真相を知っているのは、ソッコの同級生である男性刑事ただ一人。ファソンもそれをわかっている。刑事は今後どうするかは、ファソンに決めさせようとしてた(無理やり自白させようとはしなかった)。それって、たぶん刑事としてやっちゃいけないような気もするけど、昔からソッコを知っていて彼がどういう人間かをわかっているからこそ、そこまでやったソッコの気持ちをファソンに尊重して欲しかったんじゃないかな。
わたしはもちろん本家も観ていますが、こっちの方が好きです。リメイクとか関係なく、一つの映画作品として、好き。湯川先生みたいなキャラに頼ることなく、話の流れが面白いと思う。湯川先生がいなくても、「容疑者Xの献身」は成り立つ。だからって、湯川先生のいない「ガリレオ」は絶対に成り立たないんだけど。彼あっての、ガリレオ。
ということで、☆4.5。
まさかこの映画で泣くとは思ってもいませんでした。