『東京家族』

あらすじ

瀬戸内海の小さな島で生活している夫婦、平山周吉（橋爪功）ととみこ（吉行和子）。東京にやって来た彼らは、個人病院を開く長男・幸一（西村雅彦）、美容院を営む長女・滋子（中嶋朋子）、舞台美術の仕事に携わる次男・昌次（妻夫木聡）との再会を果たす。しかし、仕事を抱えて忙しい日々を送る彼らは両親の面倒を見られず、二人をホテルに宿泊させようとする。そんな状況に寂しさを覚えた周吉は、やめていた酒を飲んで騒動を起こしてしまう。一方のとみこは、何かと心配していた昌次の住まいを訪ね、そこで恋人の間宮紀子（蒼井優）を紹介される。

以下、ネタバレあり。

言わずと知れた小津安二郎監督の名作「東京物語」のオマージュ作品。だけどわたしは認めない。どこがオマージュ？リメイクでしょ。ほぼ同じストーリーじゃないの。

オマージュとリメイクの違い
簡単に言うと、
オマージュはどっかで観たことあるシーンがチラッと出てきて、「あ、今のシーンあの映画にあったよね」って気づく程度のもの。
リメイクは同じストーリーを配役を変えて作り直すこと。韓国映画をハリウッドでリメイク、とかよくあるよね。
リメイクがシリーズ化すると、リブートになります（「スパイダーマン」から「アメイジング･スパイダーマン」のような）。

「東京物語（以下「本家」とします）」を観たことがある人ならわかると思うけど、これは思いっきりリメイクです。いや、リメイクにも成り足りない、ただのパクリ映画としか思えないのですわたしには。

設定はほぼ同じ。本家では戦死していた次男が復活してたり、いたはずの三男と次女が消えていたり。まぁまぁいいですよ、その辺は。1953年の映画を今この時代に当てはめようっていう方が無理。だけどね、だからってなんでもかんでも震災絡めてくるのはやめてほしい。昌次と紀子が出会ったのが東北の震災ボランティアとか、周吉の友人の義母の死因が津波で流されたとか、どう考えても無理やりすぎる。むしろそんなシーン入れられたことで逆に冷めた。

本家では、両親は広島の尾道から丸1日かけて東京へ出てくる。でも今じゃ新幹線あるし、それほど苦じゃない。それをやっとこ東京に出てきましたーって感じで描かれていて、ちょっと息苦しい。だいたい今の68歳って、もっと元気だよ。田舎に暮らしてる人の方がよっぽど元気だったりするよ。なのにあのくたびれよう。

やっと出てきた東京で、長男にも長女（杉村春子女史。ものすっごく嫌な女）にも迷惑がられ、熱海へ放り出される老夫婦。1953年の熱海って言ったらそりゃあにぎわってただろうけど、今作ではそれが横浜に変わってます。横浜インターコンチネンタルホテルの、あの大観覧車が見える部屋に泊まらされる老夫婦。シューーーーーーール。熱海では他の客たちが大声で騒いでいて眠れない老夫婦。横浜では廊下でベルボーイに延々文句を言い続ける中国人がうるさくて眠れない老夫婦（笑）。廊下歩きながらクレーム対応？インターコンチが客をそんな扱いするとは思えない。だからさ、今この時代にこの映画をリメイクするっていうことにそもそも無理があるんだってば。それなのに「オマージュ」と言い張る山田監督。どうなの。

あと、西村雅彦とこぶ平（もとい正蔵）のしゃべり方がものすごく嫌だったわー。本家のマネなんだろうけど、今時あんなしゃべり方する人いる？至るところにまったく同じ台詞回しやカットも見られて、いったいなんなんだこの映画は、って。

そんなことを思いつつ観ていたら、後半いきなり違う映画になりました（笑）。とみこが東京で死んじゃうし。昌次と紀子がいるせいで、全然違う話が展開されています。あ、だからオマージュって言いたいのね？で、最後の最後に元に戻るっていう・・・。なんだったの。しかも泣けたのはその違う話になったところだけだよ。

一番しらけたのは、エンドロール最後に「この映画を小津安二郎監督に捧ぐ」って出てきちゃったところ。えぇっ、これ捧げちゃうの！？って。天国から「いらん」って突っ返されそう（笑）。

わたし、なんでこんなにこの映画好きになれなかったんだろう。「東京物語」を観てなかったとしたら、この映画はこの映画って割り切れたのかもしれないな。

ということで、☆2つ。
ものすごく手抜きな映画、って感じです。