『リリーのすべて』
あらすじ
1926年デンマーク。風景画家のアイナー・ヴェイナー(エディ・レッドメイン)は、同じく画家の妻ゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)に女性モデルの代役を依頼される。その際に、自身の内面にある女性の存在を感じ取る。それ以来リリーという女性として生活していく比率が増していくアイナーは、心と体の不一致に悩むことに。当初はそんな夫の様子に困惑するゲルダだったが、次第に理解を深め……。
90年前、世界で初めて性転換手術を受けた実在の男性の話です。
今でこそ性転換手術は認知度も上がって、日本でも有名人が受けたりして身近とまでは言わないけど世間的には浸透してきたと思う。でも90年も前、しかも性別を転換する手術を考案した医者がいたことがまずなによりすごい話。
画家のアイナーが自分の中の女性性に目覚めたのは、ほんのふとした瞬間。同じく画家の妻が描く肖像画のモデルが急遽来られなくなり、仕方なしにモデルの衣装(バレエのチュチュ)を持たされ、妻に「トゥ・シューズを履いてみて」と言われた時だった。
このご時世、自分のジェンダーで悩んでいる人の話を聞くと、だいたいが「子供の頃から自分の性別に違和感を感じていた」って言っていると思う。ほんとにアイナーはトゥ・シューズがきっかけで自分の本当の性に目覚めたんだろうか。もっと前からその兆候があったんじゃないか。でもあったとしても、時代がまだまだそんなことに追いついていなかったから、まさか自分の身体的性別と感情的性別が違うことがあり得るだなんて思いもしなかったのかもしれない。
このヴェイナー夫妻は普通に子供を望んていたんだけど、なかなかできなかったのね。もしできていたら、話はまた違ったのかもしれない。
そんな二人はおふざけでアイナーに女装をさせて「リリー」という名前をつけて、連れ立ってパーティーに行く。そこでアイナーは同性愛者のヘンリク(ベン・ウィショー)と出逢ってしまい、完全に自分の女性化を止められなくなってしまう(その時点で同性愛に目覚めたわけではない)。
女装が心地よくなってきたアイナーは、こっそりバレエの衣装を着たり(ここ、モザイクなしでエディくんのアレが見えちゃいます)、メイクも習得してちょいちょい女性の格好で街に繰り出しちゃったりする。その事実を知ったゲルダは大ショック。自分の旦那が女装して街を歩いてたら、そりゃあやっぱりショックだよね。でも後々リリーのことを理解して、なんとか受け入れようと努力する。アリシア・ヴィキャンデルはこの作品でアカデミー賞助演女優賞を受賞しました。
もう男性には戻れなくなっていたリリーに対し、ゲルダは言い放ちます。「私の夫を返して」と。でもリリー=アイナーなんだよ。同じ人間なんだよ。複雑。
映画のラストは事実とは異なっていて、なかなかショッキングに終わります。本当のリリーはなんと子宮まで移植されたらしい。
でもねー、どこからどう見ても、わたしにはリリーがエディくんにしか見えないのだよ。
女性っていうか、女装っていうか。首がかなり太くてがっちり見えるし(仕方ないけど)、声は低いままだし。せめてもうちょっと女性っぽく振る舞ってほしかったなあ。理想としては『プルートで朝食を』のキリアン・マーフィ(←ただわたしが好きなだけ)。
ということで、/5
今現在の性別適合手術があるのは、リリーのおかげだとエンドロールで流れていました。