それでも夜は明ける

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それでも夜は明ける

あらすじ

1841年、奴隷制廃止以前のニューヨーク。家族と一緒に幸せに暮らしていた黒人音楽家ソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、ある日突然拉致され、奴隷として南部の綿花農園に売られてしまう。狂信的な選民主義者エップス(マイケル・ファスベンダー)ら白人たちの非道な仕打ちに虐げられながらも、彼は自身の尊厳を守り続ける。やがて12年の歳月が流れ、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バス(ブラッド・ピット)と出会い・・・。

それでも夜は明ける

第86回アカデミー賞作品賞受賞作品。観るべし。

以下、ネタバレあり。

この映画の原題は「12 Years a Slave」。12年間を奴隷として過ごした実在の人ソロモン・ノーサップが残した自伝が基になっている。そして邦題が『それでも夜は明ける』。これ考えたの誰だろうね。言わんとしてることはわからなくもないけど、これは違うでしょ。観客たちは、「ソロモンが自伝を書いたということはいつかは奴隷から開放される日が来るのだ」ということは薄々わかってはいるものの、原題を知らない人は、いったいソロモンがどれだけの年月を犠牲にしたのか、さっぱりわからないんじゃないかと思う。

拉致される前のソロモンのように、北部で普通に生活していた黒人のことを「自由黒人」と呼んだそうです。このことに衝撃を受けました。普通に暮らすのにわざわざ「自由」をつけなきゃならない人種って、なんなの。人間誰でも自由でしょう。今でも自由を奪われている人たちは世界中にたくさんいるから、時代のせいとも言えないし。

なぜ自由黒人として暮らしていたソロモンが、北部で拉致され南部に奴隷として送られたのか。この映画の頃は南北戦争以前ではあるものの、すでにアフリカから黒人を奴隷として輸入することは禁じられていた。しかし南部の人間は奴隷が必要(このへんちょっとわたしには理解できない)、でも奴隷の数が足りない。ならば北部の黒人を連れてきて奴隷にしてしまえばいいじゃないか、ということらしい。身分だのなんだのはまるで関係ない。ただ体の色が黒くて働ける人間でさえあれば誰でもよかったのだ。

ソロモンは高等教育を受けていて学もあり、そこらの白人なんかよりもよっぽど頭が切れる。だけどそれをあらわにすることは絶対タブー。だから字も読めない、数も数えられないフリをする。あくまでも黒人は白人よりも下等である、その定義がない限り、黒人を虐げる理由にならないから。

きっと生まれた時から南部にいた黒人たちは、自由に暮らしている黒人が同じアメリカ国内にいるなんて、思いもよらなかったと思う。そもそも黒人たちは奴隷になる前提としてアメリカ大陸に連れてこられたわけで、そこから「自由」になるか「奴隷」のままかの境界線は、いったいいついかなる方法で引かれたのだろうか。わたしはもう少しアメリカについて勉強する必要があるみたいです。

奴隷を所有するオーナーたちはね、奴隷をいじめるのが楽しいんだって。見るに耐えない虐待のシーンもある。奴隷に子供を産ませて、その子供は目に入れても痛くないほどかわいがるのに(見た目は黒いのに)、母親は奴隷のまんま。そうかと思えば別の農園では、見事オーナーの妻に昇格した元黒人奴隷が優雅にティータイムを楽しんでいたりする。みんながみんな、黒人を蔑んでいたわけじゃない。ちゃんと人間として(もちろん人間なんだから当たり前だけど)扱ってくれる人もいる。何がしたかったんだろう、この時代の白人達は。これを書きながらわたしの手は怒りでちょっとプルプル震えています。

このままの状況が永遠に続くかと思われていた時、やってきたのがブラピ演じるカナダ人のバス。このバスのおかげでソロモンは自分の身分を証明することができ、12年の奴隷生活から開放される。これって実はなんの解決にもなっていない。ソロモン以外の人たちはまるで救われていないから。でもようやく家族の元に帰ることができたソロモンが、この12年間の実体を執筆したおかげでいろんなことが白日の下に晒される。今までこうやって拉致された黒人はいっぱいいたけれど、ほとんどの人が戻ってこなかった。だから北部の人たちは知らなかったんだ。

ブラピ、ちょろっと出演するだけだけど、おいしいところ持っていったなぁ。彼はプロデューサーとしてもこの映画に関わっていて、アカデミー賞は彼がもらいました(作品賞はプロデューサーに授与される)。

それでも夜は明ける

日本は島国で同じ人種だから、肌の色が違うだけで差別を受けるってあんまりピンとこないかもしれない。だけど欧米に行けば、いまだに日本人だって侮辱されたりするんです。”Yellow Jap”とか言ってね。こうした事の辛さは、実際に経験した人じゃないとわからないです。水かけられたり、果物投げられたりとかしない限り。わたしは外国暮らしで嫌な思いもいっぱいしたから、絶対にそういうことは起きてほしくないし、起こしたくもないです。

ということで、★★★★/5
止まない雨はない、明けない夜はない。そう信じて。

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コメント

  1. ぶたこ より:

    1 ■前に
    SMAPの吾郎ちゃんが解説してたのを見て、「パワーオブワン」っいう南アのアパルトヘイトの映画を思い出しました。。。

    差別って考えさせられますね。何が違うの?一人ひとりみんな同じ人っていないのに何で分けようとするんだろう?

    そして改めて自分の幸せさを痛感します・・・。
    http://ameblo.jp/bu-bu-butasann/

  2. はな より:

    2 ■◎ぶたこさん
    差別はきっとなくならないんでしょうね。
    人はどうしても他人より優位に立ちたがるものですから・・・。
    悲しいことです。
    http://ameblo.jp/flower51/

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