エンディングノート

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エンディングノート
『エンディングノート』

あらすじ

2007年、高度経済成長期に段取り命で働いたサラリーマンの砂田知昭が、40年以上勤めた会社を67歳で退職。第二の人生を歩み始めた矢先、毎年欠かさず受けていた健康診断で胃ガンが見つかり、すでにステージ4まで進行していた。そこで砂田は人生最期のプロジェクトとして段取りの集大成、“エンディングノート”の作成に取り掛かる。

エンディングノート

母が観たい観たい、というので一緒に観に行ってきました、「エンディングノート」。一人の男性がガンを宣告され、その命を終えるまでの最期の過ごし方を描いたドキュメンタリーです。

以下、ネタバレあり。

砂田麻美監督は、砂田さんの次女。ナレーションはたぶん長女さんだったんじゃないかと思います。

ガンを宣告されてから映像を撮り始めたというわけでもなさそう。退職した日のパーティーの様子も残っていたから。家族の記録として残そうと思っていたのかな。

「エンディングノート」とは、遺書より効力を持たない覚え書のようなもの。遺された人たちが困らないように、いろいろ段取りを決めておいたほうがいいから。段取り命だった砂田さんらしい気遣い。

教会で葬式をしてもらうために洗礼を受けようとしたり、アメリカに住む孫たちが日本に来た時は全力で遊んだり、とにかく残された時間を存分に使おうとする。決して暗くならず、ユーモアを忘れず。それを「終活」と呼ぶらしい。

ドキュメンタリーなので、せりふを言わされているわけではなく、口から出てくるのは登場人物たちの正直な気持ち。孫たちに「よく来たね。いっぱい遊ぼうね。」というシーンでは泣けて泣けて仕方なかった。

エンディングノート

常にカメラは回っているのだけど、もういよいよ、という時、奥さんが「パパと二人にして」と言って、みんなを病室の外に出す。

「パパがこんなにいい人だったなんて知らなかった。わたしも一緒に逝きたい。」

こんなこと、家族の前じゃ恥ずかしくて言えない。でもカメラは回りっぱなし(笑)。

エンディングノート

一度は熟年離婚の危機も迎えた二人だけど、「一緒に逝きたい」だなんてなかなか言えないこと。夫婦の間のことなんて子供にだってわからないし、なんだかんだ言ってものすごく強い絆があったんだと思う。

アメリカから長男夫婦が戻ってきて、やっぱり長男だからいろいろ仕切ろうとし始める。「葬式の時はどこまで連絡すればいいの?」「香典は受け取らないけどお花はいただいてもいいんだよね?」なんて、今際の際の人間にガンガン聞いていく。それ、アメリカナイズなのか?なんなのか?今までずっとそばで支えていたのは奥さんだし、長女だし次女だし、外国で暮らしてて何も見ていなかったのにそれはないだろうよ、とすら思ってしまったけど、でもそれもすべて「エンディングノート」に基づいてやったことなんだよね。

飛ぶ鳥後を濁さず。

誰もきれいに死ねるわけじゃない。死んだ後からいろんなものがわんさか発見されて、たいてい親戚中騒然となる。冠婚葬祭って、そういうものだ。

だけどそれでも、自分の死に際を見定めて、少しでもきれいに、やさしく、おだやかに命を終えていこうとする。うちの父は、突然逝ってしまったから、なんにも整理できていなかった。隣りにいた母は、何を思いながら観ていたのだろう。

小さな珠玉の作品なので、あんまり公開してる劇場もないし、いい加減上映自体が終わり始めてる。でももし家の近くの映画館で上映されていたら、ぜひ観に行ってほしいなと思う作品です。

ということで、☆5つ。
ハンカチ・ティッシュをお忘れなく。

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