『ベン・ハー』
あらすじ
些細な出来事から旧友メッサラ(スティーヴン・ボイド)の裏切りにあい、奴隷船送りとなったジュダ=ベン・ハー(チャールトン・ヘストン)は、そこで命を救ったローマの将軍の養子となる。
束の間の安住の後再び故郷へ戻った彼は、別れた家族が獄中死したと聞かされ戦車競技に出場する事を決意する。
そこではメッサラとの宿命の対決が待っていた。
この映画には、特別な思い入れがあります。初めて観たのは中学生の時。ものすごい衝撃を受けた記憶がある。
話すと長いのですが、今の映画好きなわたしを形成した1本といっても過言ではありません。
それゆえ、「午前十時の映画祭」でスクリーンで観られると知ったときは、狂喜乱舞しちゃったもん。
ユダヤの豪族の息子、ジュダ=ベン・ハーの数奇な運命を通してローマの圧政とキリストの最期を6年半の製作期間と54億円の巨費で描いた一大スペクタクル。
キリストの受難あり、ハンセン病あり、ローマの奴隷制度ありの、とにかく密度の濃い4時間の超大作。
1959年のアカデミー作品賞を受賞しています。
もうとにかく、「すごい」としか言いようがないのです。
最初は厚い友情で友情で結ばれていたジュダとメッサラ。だけどメッサラの裏切りに遭い、ジュダは奴隷にされてしまう。
わたしの記憶では「メッサーラ」だったんだけど、字幕は「メッサラ」になってた。なんとなく違和感。
感じ悪、メッサラ
チャールトン・ヘストンの体はまるでギリシア彫刻のように美しく、見ていて惚れ惚れする。
どうやったらあんな体ができるんだろうねぇ、って言ったら、「奴隷船で働けばいいんだよ」と至極もっともな回答をいただきました。いや、そういうことじゃなくてさ。
結婚・離婚を繰り返すハリウッドにおいて、1人の女性を生涯の妻としたチャールトン・ヘストンの生き様も大好きだ!!!!
4時間の間に見せ場はたくさんあるのですが、やっぱり特筆すべきは馬車による戦車競技のシーン。
中学生のときにこの映画を教えてくれた先生が、「あのシーンは未だにどうやって撮影したかわからない」と熱弁を振るうほど、とにかく息をするのも忘れてしまうくらいのド迫力。
きっとカメラマンも同じような馬車か何かに乗って撮影しているはずなんだけど、ほんとにどうやって?と聞きたいくらい。
身震いするほどの緊迫感とコーナリングでのテイルtoノーズの戦いは、どっかで観たと思ったらF1と同じじゃん!
もしかしたらこの映画、わたしのF1好きにも影響を及ぼしているのかもしれない。
戦車シーンを観るだけでも、この映画の価値はある。絶対。ほかがどうでもいいってわけではないけれどねもちろん。
とにかく記憶鮮明だった戦車だけど、今回観てみたら海上の船での戦いもなかなか見ごたえがあった。
きっと今まではテレビでしか観たことがなかったから、大きなスクリーンで観ると目の捉え方も違ってくるんだろう。
4時間の長丁場ですから、いつものごとく落ちてしまう瞬間もあるわけでして(笑)。
キリストが丘の上でお説教始めるあたりから、ちょっとだけ記憶がない。
キリストが十字架に磔にされて、まさに命を落とそうというその時に雷が落ちるんだけど、その迫力ったら!
これは映画館の音響によるところがかなり大きいんだけれど、マジで隣りに落ちたかと思うほどの衝撃。
実際にキリストが画面に映っているわけではないのに、その音で「あぁ、絶命したんだな」と納得させる。
雨を伝って流れるキリストの血が印象的。
観終った後、しばらく動けなくなるような作品。ずしん、と体の深いところに響くような。
「すごいもの観ちゃった」感で頭がいっぱいになる。でもこれは「パピヨン」を観たときみたいな疲労感ではない。
爽快感とも違う、なんていうか、そう、「映画ってすごい!」って、結局そこに落ち着くような感覚。
これを教えてくれた中学の先生、試験期間中だったにも関わらず観ることを薦めてくれた母に感謝したい。
あの時この映画を観ていなかったら、今、こんなに映画を観に行く人間にはなっていなかった。
もし叶うのなら、いつかまたスクリーンで観てみたいと思う。いや、絶対観る。
ということで、☆8つ(!)。
映画って、本当にいいものですね。