キャタピラー

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もう1ヶ月も前のことですが、「キャタピラー」を観ました。
寺島しのぶが、第60回ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した作品。
正直こんな賞を獲ってなかったら、絶対観てない映画。

キャタピラー

『キャタピラー』

あらすじ

勇ましく戦場へと出征していったシゲ子の夫、久蔵。しかし戦地からシゲ子(寺島しのぶ)の元に帰ってきた久蔵(大西信満)は、顔面が焼けただれ、四肢を失った姿だった。
多くの勲章を胸に、「生ける軍神」と祭り上げられる久蔵。
シゲ子は戸惑いつつも軍神の妻として自らを奮い立たせ、久蔵に尽くしていくが・・・。

キャタピラー

以下、ネタバレあり。

とにかく悲惨な戦争映画かと思いきや、あくまでも主役はシゲ子。
日本における空爆や殺戮などの壮絶な場面は一切出てこず、なんとものどかな田舎の風景が広がる。

戦地から戻ってきた夫は、両手両足を失い、耳も聞こえず、生きる肉の塊でしかなかった。
そんな夫を村人たちは「軍神」として崇め、シゲ子に「しっかりお世話するように」とプレッシャーをかけていく。

キャタピラー

「こんなの久蔵さんじゃない」
そう思いつつも、軍神を邪険にするわけにはいかない。少なくとも「夫」なのだから、面倒を見るのは「妻」の役目だ。
そんな手足を失った「夫」に残されたのは、もらった勲章を眺めて悦に入ることと、食欲と性欲だけ。

食べて寝て、食べて寝てを繰り返す夫に、ついにシゲ子が切れる日がやってくる。
「なんなのよ。何が軍神よ。いいから食べなさいよ。軍神様にっていただいた卵なんだから!」
寝たきりの夫の顔に、生卵をベチベチぶつけていくシゲ子。
この日を境に、「夫」と「妻」の立場が逆転する。

「さぁ、今日は出かけましょうね」
嫌がる夫に軍服を着せ、リヤカーに乗せて自分が働く田んぼまで連れて行くシゲ子。
当然、村人たちは「軍神様だ」とひれ伏す。祈りだす。
働いている間、夫は完全放置プレイ。リヤカーに乗せられたまま、ただひたすら仕事が終わるのを待つのだ。

キャタピラー

シゲ子の復讐。
「どう、私は働けるのよ。あなたには何もできないでしょう?
ただそうやって見ているだけ。私が世話をしないと、あなたは生きていけないのよ。
ざまぁみろだわ。いい気味。」

そんなことは、シゲ子は一言も言っていない。だけど、明らかに復讐にしか見えない。
だってシゲ子は、夫が出征する前、今で言うDVを受けていたのだから。
無視という復讐。醜態をさらすという復讐。直接的でない方法のほうが、ある意味怖い。

久蔵は、赴いた中国の戦地で、犯してはならない罪をさんざん重ねてきた。
それに対する報いがこれなのか。彼は幻覚に苛まれつつ自問する。
このまま一生、妻の世話を受け続けなければならないのか。
そうしないと生きていけないのはわかっている。

戦争ってなんなの。命ってなんなの。
戦地で失われた命は数え切れない。生きて帰ってこられただけでもシアワセ。
果たしてそうだろうか?
自分の夫がポンッとイモムシのようになって戻ってきたとしたら、私は受け入れられるだろうか。
「愛があれば大丈夫」だなんて、簡単なことを言えるだろうか。
だからって、いなくなってほしいだなんて思えるだろうか。

ラストは私が想像したとおりだった。
でも、一緒に観た連れは「戦争が終わって軍神なんて結局意味のないものになって、久蔵は子供たちからさんざんからかわれる人生を送っていく」と想像したらしい。
子供って、素直すぎて残酷だから。でもそうはならない、というか、なれない。

画像は暗いし荒いし、低予算で作られたことはよくわかる。
そこがまた内容に合っているし、そうでなければならなかったのかもしれない。

恐るべし、寺島しのぶ。
あなたのヌードは決してきれいなものではない。
だけど裸すら、衣装ではないかと思わせてしまう迫力がある。

ってことで、☆3つ。
いや、戦争映画って、もともとニガテなので・・・。

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