悪人

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深津絵里が第34回モントリオール世界映画祭最優秀女優賞を受賞した映画、「悪人」。
そんな賞を獲る前から、観てみたかった作品でした。深っちゃんの体を張った演技とか。
監督は「フラガール」の李相日。あの面白悲しかった常磐のハワイとは真逆の、救われないお話。

悪人

『悪人』

あらすじ

若い女性保険外交員(満島ひかり)の殺人事件。
ある金持ちの大学生(岡田将生)に疑いがかけられるが、捜査を進めるうちに土木作業員、清水祐一(妻夫木聡)が真犯人として浮上してくる。
しかし、祐一はたまたま出会った光代(深津絵里)を車に乗せ、警察の目から逃れるように転々とする。
そして、次第に二人は強く惹かれ合うようになり・・・。

悪人

以下、ネタバレあり。

祐一は長崎の港町で、祖父母に育てられた。決して裕福とはいえない環境下で。
でも、ぶっきらぼうながらもきちんと祖父母の面倒を見ているし、仕事もちゃんとしている。
だけど、鬱屈した感情を吐き出す術や場所を知らず、矛先を出会い系サイトに向けざるを得なかった。

悪人

そのサイトで出会ったのが福岡に住む佳乃。お互い遊びだと割り切っていたはずなのに、不幸な結末が訪れる。
嫉妬と恐怖と怒りの感情を抑えきれなくなった祐一に、首を絞め殺されてしまうのだ。

悪人

佳乃を演じる満島ひかりって、先クールの月9にも出てたけど、あのFolderの子だよね?
いつのまに女優さんになっちゃったのー?なかなか存在感あるし。
Folderといえば、三浦大地。びっくりするほどJackson 5時代のマイケルと歌い方がそっくりだった。
カラオケでよく歌ったなぁ、パラシューターとか(笑)。

真っ先に疑われたのは、直前まで佳乃と一緒にいた大学生、増尾。

悪人

こいつほんっとに嫌なやつ。自分を中心に世界が回ってると思ってる。
あああ、あたしの岡田将生がぁぁ・・・・。「重力ピエロ」の頃のかわいらしさはどこへ?
成長したのね、としか納得できない、ほんとに嫌なやつでした(笑)。まさに「悪人」。

そう、なかなか深っちゃんが出てこない。やや間延びした序盤の展開。
人物像を掘り下げるのはいいのだけれど、ハリウッドのような疾走感みたいなものがない邦画は、だんだん眠くなってきちゃうんだよねぇ、わたし。

で、やっと出てくる光代(深津絵里)。佐賀の国道沿いの紳士服量販店で働く、どこか世の中を捨てたような女。

悪人

妹と二人暮し。妹は男を家に連れ込んだりする。なのに私は・・・みたいな。
ごくごく狭い範囲でしか生きてこなかった光代が手を出したのが、これまた出会い系サイト。
でも、佳乃と違ったのは、光代は本気の出会いを求めてたってこと。
一度連絡を取った祐一に、2ヵ月後「佐賀の灯台の話をしたのを覚えていますか?」と、またメールをする。
すでに犯罪を犯した後だった祐一は、光代に会うために車で佐賀へと向かう。

この祐一の車が、今時そんな?みたいな、典型的シャコタン、巨大マフラー(そしてたぶんウーハー)搭載ヤン車で(笑)。
昔そんな車に乗っていた知り合いがいて(フツーの方でした)、夜中迎えに来られるたび、マフラーの音がうるさくて正直迷惑でした(笑)。近所迷惑だっつうの。
ま、夜道をウーハー鳴らして走るのは、プチライヴハウスみたいで楽しかったけど。

なんだかんだで意気投合してしまった祐一と光代。祐一は罪を打ち明け、二人の逃避行が始まる。
疑われていたはずの増尾の証言で、祐一が犯人として浮上し、家には警察が訪れる。
祖母は祐一に「今警察が家に来てるんだけどね・・・」と電話してしまう。もう家には帰れない。

連日マスコミに囲まれ、外出すらままならない祖母(樹木希林)。

悪人

犯罪者を「悪人」とするのなら、祖母は明らかに悪人側の人間だ。
だけど決してそうは見えないのは、孫を育てた苦労だったり、悪徳商法にだまされたり、こうしてマスコミに囲まれたり、そこはかとなく「弱者であること」が前面に出されているから。同情すらしてしまう。

希林さん、こういう役をやらせたら天下一品だと思う。
若い頃から老け役が多かったそうだけど、やっと年齢に追いついてきたというか。
歩いても歩いても」で見せた、息子の命を失う原因となった男性に対して放った一言、鳥肌立ったなぁ。

一度は警察に自首する決心を固めた祐一だが、光代の方がそれを受け入れることができなかった。
行く宛てもなくなった二人は、ヤン車を乗り捨て、光代が話していた灯台を目指す。
そこは二人にとってのユートピアとなるはずの場所だった。

悪人

そんな生活、長く続くわけがない。
祐一の顔は、テレビのニュースでバンバン流れている。
光代の妹は、姉が殺人犯と行動を共にしていることで世間から見られる目が変わってしまった。

それでも、ずっと二人でいたいんだ。

ほんの数日前に出会ったばかりなのに、しかも相手は殺人犯なのに、一緒にいたい。
そんな光代の心理がわからなくもないのだけれど、その先に未来はないの。
人は楽しい将来が待っていると思うからこそ、その人と一緒
にいたいと思うのだろうし、私自身だってそうだ。
それなのにこの二人を待ち受けているのは、別離、絶望、孤独。
だから、だからこそ、この刹那の瞬間すら惜しむかのように、一緒にいたいんだ。

警察に灯台を囲まれ、逃げ場のなくなった祐一が取った最後の行動。
あれは本心だったのか。それともそうすることで、あくまで光代は「被害者」であることを示したかったのか。
私は後者であって欲しい。それこそが祐一の「愛」だったと信じたい。

娘を殺された父親は暴走し、怒りは別の方向へと向いていく。
いつだってそうだ。マスコミは被害者の生きてきた道を、面白おかしく書き立てる。
逆に加害者が、いかに不遇な環境で育ったかを強調し、同情を仰ぐ。

被害者側が「悪人」になることだって、簡単にできるんだ。

最後に事件現場となった山道で、光代はつぶやく。

「そうですよね。あの人は人を殺した『悪人』なんですよね。」

それでも彼女は、祐一を待ち続けるのだろう。
その灯台が照らす光の先に希望があるなら、私は生きていけるのだと思いながら。

悪人

ってことで、☆3.5。
この内容で、2時間半弱は長すぎます・・・。

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